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Dear, my dear.

ゼノブレイド2非公式二次小説置き場。 ジクメレ・カグメレ等メレフ中心。 管理人:琉

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201803

ジクメレ


【忘れられた指輪】
年甲斐のないごっこ遊びのような関係だった。冗談半分で渡した親愛の指輪をメレフは「誓いでないなら頂こう」と受け取った。だから贈れるわけもなかった誓いの指輪を今更荷物の底で発見し、ジークは苦笑する。旅は終わり、思い出になった。残ったのは良き友だけ。シルバーは既にくすみ始めていた。

【捨てられないガラクタ】
「メレフにやるわ」偶然手に入ったから、とジークから渡された親愛の指輪。自分たちの歳にも身分にも不釣り合いな玩具のようなそれを、しかしメレフは未だに捨てられずにいる。旅は終わり、綺麗な思い出になったのに、何の未練があるというのか。分からないまま、リングケースごとチェストに仕舞った。

【その色は誰の色?】
野生のクランベリン・ベルを見つける。せっかくなので拝借して近くのメレフにも分けた。「懐かしい、昔弟と食したことがある」またか、とジークは呟く。雑談の二言目には弟だ。それを語る顔はいつも優しい色をして。(従弟なんか半分他人やろ)自分といる時にそんな顔、と、言える間柄でもないけれど。

【その色は誰の色?】
メレフにマヨヤキタコを食わせてみる。彼女は食べ歩きに難色を示したが、そういう食べ物だと納得させた。「ジークといると余計な経験ばかり増える」「悪うないやろ」「まあな」半分づつ分け合って歩く。調子に乗って「このままワイの色に染めたる」と際どい冗談を投げると、死ぬ程冷たい目で睨まれた。

【甘えてよ】
「もうちいと甘えてええんちゃうか」「カグツチがいるからな。他にお鉢が回らないだけだ」もし回ったら、それは相当まずい時だ。以前そんな会話をしたと休息中普段より詰められた距離に思い出す。モルスの地。カグツチの無事が知れずメレフは目に見えて焦燥して。大丈夫やと、ジークは明るい声を出す。

【優先順位】
「昔から優先順位を間違えたことはないんだ」微かに寂寞の混じる言葉の通りメレフの大切は既に確定していて、ジークはそこに割り込む気はない。だのに彼女は宣言する。まるで別れの言葉のようで、精一杯に抵抗してみせた。「まあ、軍人しとる間はええけど、他に貰われそうになったら攫いに行ったるわ」

【でも、明日怒られそう】
意地っ張りの癖に押しに弱い。強気に迫れば普通にヤれそうと割と最低なことを考える。(いやせぇへんけど)ちらりとカグツチを見る。翌日怒られるどころの騒ぎではない。「何?」「もしワイがメレフに手ぇ出したらどうする?」「燃やすわ」「せやろな」妙な気は起こさないでおこう。ジークは賢明なのだ。

【幸せの終わり】
「私にも恋ができるとは思っていなかった。感謝している」旅の終わり。ジークと別れの握手を交わしメレフは言う。「今更言うんか」「今更だからだ」この先も関係は続く。ルクスリア王子とスペルビア特別執権官として。「お前の傍で生まれて初めて、私はただの私でいられた」そんな幸福が終わるだけだ。

【なんて身勝手な願い】
スペルビアの為に生きたい。さりとて共にも生きてみたい。「なので引退したらルクスリアに行こうと思う」これで両取りだと得意げなメレフにジークは笑った。ノポンもびっくりの強欲だ。「それまで待てってか、身勝手な奴やな」軽く40年は先の話。だがその未来は悪くない。「しゃあない。介護したるわ」

【君が全部忘れてしまっても、僕が全部教えてあげる、】
「この中で真っ先にメレフ様を忘れるのは私なのよ」自嘲のような言葉を黙って聞く。「それで一番長く覚えていられるのは貴方なのでしょうね」羨ましいわ、と軽い声でカグツチは言う。「メレフの事くらい何遍でも教えたるがな」ジークだってカグツチにはいつまでもメレフを知っていて欲しいのだから。

【散って初めて 咲いていたことを知る、そんな恋だ】
ルクスリア王子婚姻の報は、相手がブレイドということでアルストを震撼させた。「やっとくっついたのか」スペルビアでそれを聞き、メレフは心から二人を祝う。けれど更にその奥で徒花がはらはらと散っていく。咲いていたことを、今知った。「カグツチ、祝いの品を。とびきりのものを贈ろうじゃないか」

【酔ってるふりして 私は貴方に、
 気付かないふりして 僕は君に、】
確かに酒には弱い。だが正体をなくしたことはない。限度と節度は弁えているつもりだ。だが。「メレフ、立てるか?」理性と立場を忘れる言い訳が欲しくて酔い潰れたふり。手首を掴んだ彼を見上げ笑う。「ジーク。好きだ」硬直、後、溜息と微笑。「そうか、ワイもや」頭を撫でられるのを甘んじて受けた。

「ジーク。好きだ」酔っ払いの戯言と流すにはあまりに望んだ一言に息の仕方を忘れた。せっかく互いの感情に気付かないふりを貫いていたのに。「そうか、ワイもや」このまま襲って許される気がする、それを堪えて頭を撫でるに留める。酔ったふりしても駄目や。メレフの企みにこそ、気づかないふりだ。

【それは寒い夜だった。】
ゲンブ港にて一晩を過ごす。「夜は一段と寒いな」「スペルビア人には尚更きついやろ」暖かい部屋にいればいいのにルクスリア建築目当てに外に出たメレフが身を縮こめる。「鼻赤いで」何気なく指摘すると彼女は顔を背けてしまった。恥ずかしいらしい。ああ女なんやな、とジークはこの時初めて認識した。

【終わりのない夜】
「幼い頃、眠らなければ明日は来ないと思っていた」スペルビアの夜、酒場を出て。旅は終わり、明日にはメレフと別れる。「何や急に」「つまり名残惜しい」「今結構酒入っとるで」「だから言っている」細い手を引きジークは路地裏へ外れる。抵抗はない。そのまま安宿へ。もう少しだけ今日を続ける為に。

【君がいなくても生きられるけど、君がいる世界で生きていきたい】
ジークがいなくてもメレフの人生は変わらない。帝国に尽くして側にカグツチがいてやがて伴侶を迎えて。国を離れる道もあるだろう。「だからこそ、お前と生きてみたい」求婚の承諾はそんな言葉になった。表向きは政略。互いでなければならない理由は多分ない。それでも。「きっと、悪くない人生になる」

【あの日の恋を どうして殺せなかったんだろう、】
きっかけは瑣末。世界を救いたいと語る眼差しが挫折を知りながら真っ直ぐで。その色にメレフの信頼は呆気なく上書かれた。それを許すべきでなかったと後悔は遅いから後悔と呼ぶ。旅を終えたスペルビア。ジークへの手紙を結ぶ愛を込めての定型文に息を吐く。こんな感傷はカグツチにも知られたくない。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



カグメレ


【飼い犬に手を噛まれる】
唇をなぞる指先を、悪戯心で甘噛みした。「飼い犬に手を噛まれる、という奴だな」「あら、躾はされているつもりですが。メレフ様の仰る通りにお仕えしますよ」微笑む。「こちらへ、カグツチ」許しが出たので距離を詰める。更に次の言葉を待つ。今まで察させ続けたメレフは、ここにきて困った顔をする。

【重なった偶然】
全て偶然だった。正統の後継者がいなかったのも、皇妃に子が望み辛いと言われていたのも、彼女がちょうどコアだったのも、メレフにドライバー適正があったのも。「何か違っていたらお前のドライバーにはなれなかった」「なら、運命と呼んで良いのでは?」その方がロマンチックですとカグツチは笑う。

【普通の尺度】
「カグツチってそんなに過保護だったっけ」ヒカリが言う。「昔の私は違った?」「もう少しドライだった気がする」単独行動も多かったらしい。日記の記述とも一致する。「でも、今の私には普通のことだから」ドライバーが愛おしい。それが当代がとりわけ強く持つ感情なら、こんなに誇らしいこともない。

【君だけだ なんて、何人にそう言ってきたの?】
「あなただけです」囁いてくれる真っ直ぐな愛が、時々心臓に嫉妬という名の棘を残す。「お前は今まで何人にそう言ってきたのかな」カグツチは困った顔をする。当然だ。今の彼女にとっては真に『メレフだけ』なのだから。(お前の初めてになってみたかった)声にはしない。すまないと詫びて、指を絡めた。

【いえない一言】
スペルビアは誇りだが、権謀術数渦を巻く政治の世界はうんざりする。それがメレフを消耗させるのなら尚更。二人で逃げてしまいましょうか。どこか遠くの自由な場所へ。冗談にもならぬ言葉を飲み込み疲れた様子でカグツチの肩に額を埋めたメレフの背を撫でる。この優しい心が明日も折れず戦えるように。

【眼を閉じて、キスをするから。】
ストレス軽減の効果があるからとハグを求められた。「キスにも同様の効果があることはご存知ですか?」ひとしきり抱きしめた後で微笑む。驚いたメレフに、目を閉じて、と囁く。顔を寄せ、まさに触れる、その瞬間カグツチは「冗談ですよ」と目的地を変え、ぎゅっと閉じられた瞼の上に唇を押し付けた。

【夢だったらよかったのに】
忘れられることなくずっと一緒にいられたらと夢を見たことがある。マンイーターではなくて、メレフは生きたまま、遠い未来に至るまで思い出を有してカグツチと二人で。「ブレイドイーター、か」それがただの妄想ならよかった。そうしたらジークとサイカを見て羨み痛む心などどこにもなかった筈なのに。

【彼氏気取りかよ】
気を抜けば肩がぶつかりそうになる人混みのアヴァリティア。メレフが庇うようにカグツチの腰を引き寄せたのを発見する。「何、彼氏気取り?」「お似合いだろう?」からかってみたがメレフには胸を張られる。「ご冗談も程々になさいませ」そう言うカグツチの頰が上機嫌に緩むのをニアは見逃さなかった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



ネフェメレ、他


【その色は誰の色?】
旅の最中に立寄る用があってとメレフが挨拶に来た。「お元気そうで何よりです」「従姉さんこそ変わりなく」嘘だ。生き生きとした顔、柔らかく光る瞳、自然な表情。そして微かに増した色香は。(どこかの馬の骨に、とか、言わないでくださいよ)送り出したのはネフェルだが、それはちょっと聞いていない。

【どこへ帰ればいい?】
幼い頃、危険と責をメレフ一人に負わせてただ玉座で待つ自分が嫌だった。「陛下がいなくなってしまっては、彼女はどこへ帰ると言うのです」その時ネフェルを叱ってくれたワダツミのコアを今彼女に手渡して、「いってらっしゃい、従姉さん」と微笑む。旅立つ背中に、どうか無事に帰ってきて、と願った。

【一緒に帰ろう】
「—陛下!」起動停止したデバイスの残る帝都に響いた声に振り返ると、走ったのだろう、荒い息のメレフがいる。「メレフ・ラハット、只今、帰還、致しました…っ!」跪き、感極まった帰任報告。泣きそうなのはネフェルも同じ。「おかえりなさい、従姉さん」また一緒に皇宮へ帰れるこの日を待っていた。

【一生一緒にいたいけど 誰にも祝福されない恋だから、 きみには他の誰かと共に 普通に幸せに生きて欲しい】
物心ついた時から憧れだった。そんな彼女が生涯側にいてくれたらと夢見たこともある。けれど、メレフは従姉で義姉で。スペルビアの法は自分と彼女を認めない。血が濃くなると議会も渋るだろう。「だからもう私は、貴方が幸せならそれで良い」ルクスリアとの縁談を纏めながら、ネフェルは小さく呟いた。

【君が僕の弟でよかった/貴方が姉でなければよかった】
「貴方が私の弟で良かったと思っているのです」嬉しい筈の言葉が痛い。「誰よりも貴方の側で、味方でいられる」「ええ、私も。貴方が姉でよかった」嘘だ。姉でなければ良かったのにと思っている。もう少し遠くにいてくれたら手だって伸ばせた。「光栄です」メレフが笑う。ネフェルの内心など知らずに。

【泣いちゃうかもね】
「時々貴方が嫌いです」幼い頃、ワダツミの正論に辟易してそう言ったことがある。「では、コアに戻りましょうか」「……それは困ります。泣いてしまうかもしれません」結局それさえ言い負かされた。「困ると言ったのに」そんな彼はもうどこにもいない。冷たいコアクリスタルを手に、ネフェルは泣いた。

【愛する臆病者】
ネフェルは臆病な子だった。ドライバーとしての才は従姉のメレフに遠く劣り、「この程度ではドライバー失格ですね」とよく自嘲していた。そんな彼が最期に奮った無謀の勇気。守るべき者と守りたい者を守ろうと。ああ、けれど、貴方を守れずに、私こそブレイド失格だ。そして、ワダツミは彼を忘れた。

【ずっと君を見てたから、誰より先に気付いてしまうの、皮肉だね 君の恋の始まりなんて 知りたくなかったのに、】
同調した日からずっとジークを見ていた。10年以上側にいて野宿にも不幸にもすっかり慣れた。(でも、恋に落ちる瞬間は、見とうなかったなあ、なんて)軍服に向けられる眼差しの、サイカが独占してきたものとは似て非なる優しさ。恋敵は嫌いになれたら楽なのに残念ながら善人で、何かを誤魔化す息を吐く。

【たとえばの話】
「たとえば、かつての私と一言だけ言葉を交わせるならば、君は何と言う?」ワダツミはたまにそんな話をする。曰く、私だって過去を知りたい。「そうね。貴方のこと結構好きだったわ、かしら」だからカグツチも、嘘は吐かないと決めていた。「私には言ってくれないのかい」「貴方とはまだ日が浅いから」

【覚えてもいないくせに】
メレフが帰国し、ワダツミは以前のようにネフェルの側に控えるようになった。「ドライバーの側でなくて不満ではありませんか」「前ドライバーを御守りできる。十分です」「覚えてもいない癖に」ワダツミは困った顔をする。「失礼。どうも感傷的になっていけない」ネフェルは従姉のブレイドへ謝罪した。

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